
~ 本人が望めば ~
今年の夏は本当に暑かったですね。この100年で東京は一番の暑さだったそうです。今年の中秋の名月は満月と重なるということで、お天気が気になりましたが、運よく晴れて、神々しく光を放つ満月を見ることが出来ました。
10月7日に西東京市福祉推進協議会主催の講演会が開催され、講師として話をする機会を得ました。テーマは「自分らしく生き、自分が選ぶ終末」で、これまでの介護現場の経験を終末に焦点をあて、事例を紹介しました。
2001年に「私はこの家で死にたい」を実践した阿部千寿子さん。サポートハウス年輪の設立メンバーで年輪弁当の基礎を作り、70歳で後進に譲り、レストラン「魔法の手」を運営、グループホーム実現に奔走していました。
末期癌と分かってから、余計な治療はせず、将来ヘルパーが入った時に、双方が楽なようにと、引出し、台所を整理するなどの準備をしました。そして「ここがグループホームになるといいね」と遺言してくれ、グループホーム「ばぶちゃんち」となりました。
2023年9月に自分の思い通りに過ごし、家で最期を迎えた、サポートハウス年輪の元事務長の山下孝一さん。昨年、末期癌と分かった時に、治療はせず、出来るだけ仕事もしたいとの話を聞きました。具合が悪くなっても救急車は呼ばない、かかりつけ医から訪問診療医を紹介してもらい、8月下旬まで自転車に乗り、通院されていました。それから約2週間後、家で最期を迎えられました。最期まで本人の考えが揺らぐことはなく、サポートされたご家族も立派だったと思います。
このお二人に影響を与えたのが、近藤誠さんの「患者よ 癌と闘うな」(1996年)でした。本人の考えがしっかりすることで、周りのサポートが得られ、新しいサービスも開発していきます。お二人の生き様に多くの学びがあることを、お話しました。
グループホームの看取りについては、元管理者の瀧口智子さんから、死にいく家族を受け入れ、覚悟を決めるまで時間がかかる、自分の考えを公文書で示していると家族が助かる、旅立ちの瞬間は本人が決められるなど、現場での経験を話してもらいました。
秋になると美味しいものがたくさん出てきますが、夏の終わりに楽しめる「いちぢく」は、暑さ疲れにはピッタリの食べ物ですね。尾道の蓬莱柿(ほうらいし)という品種は、皮が薄く、何とも言えない甘さが口の中に広がります。
いちぢくパワーで、夏の疲れを取り、次なるステップへダッシュです。
理事長 安岡 厚子

山陽新幹線の車窓から見える富士山(2023.9.30)

蓬莱柿(ほうらいし)